貯蓄性のある保険は、資産形成にとって望ましくないものが多いと感じています。この記事では、一例として外貨建て保険について思うことをまとめてみました。異論もあるかもしれませんが、あくまでも一個人の意見ということで、ご容赦頂けますと幸いです。
外貨建保険とは
概要
以下のような説明が保険会社のWEBページ上でなされています。(ネガティブな持論をこの後、展開するため、あえて、どこの保険会社の説明かは伏せさせて頂きます。)
USドル建などで「万一」にそなえながら、将来のための資産形成ができる保険です。
さらに、円以外に資産を持つことによりインフレによるリスクにそなえることができます。
手数料、利回り、特徴等
為替手数料
外貨建保険ということで、日本円から外貨に両替する、為替手数料が発生します。一例ですが、通常買付時には1US$あたり1円、払戻金を日本円で受け取る際には1US$あたり50銭(0.5円)の為替手数料が発生するという外貨建保険のプランがありました。仮に1US$=100円とすると、手数料は往復1.5%です。
この為替手数料は極めて高いです。
例えば住信SBI銀行の外貨積立預金機能だと、1US$あたり2銭(0.02円)の為替手数料で日本円からUS$への両替ができます。最終的に返戻金を受け取る際は、逆方向の手数料が発生するため、結果的に1US$当たり4銭(0.04円)の手数料です。この場合、0.04%の手数料となります。外貨定期預金の場合でも1US$あたり片道4銭(0.04円)で、往復0.08%の手数料が実現できます。
1.5% vs 0.04%の差はなんと37.5倍の差です。例えば年間120万円の積立を5年間行った場合、為替手数料だけで、-90,000円 vs -2,400円という差になるのです。
利回り
外貨建保険の中には、利回りが最低3%/年とうたわれている商品があります。3%の利回りは非常に魅力的ですが、説明をじっくり読んでいくと気になるコメントが書かれています。
- 積立利率は毎月1日に設定されます。設定された積立利率は、1ヵ月間、積立金に付利し、積立金を増加させます。毎月の積立利率は、その前々月のこの保険の運用実績から資産運用のための運営費率、積立金を最低保証するための保証費率、その他費用を差し引いた利率となります。
- 積立金からは、死亡・高度障害保障のための費用などが毎月控除されます。
そのため、積立金がそのまま積立利率で運用されるものではありません。
※ 控除される費用は、保険金額・契約年齢・性別・経過期間などによって異なりますので、一律には記載できません。- 積立利率は年3.00%が最低保証されています。
赤字部分に着目すると、3%以上の年利がうたわれているものの、運営比率や保証費率やその他費用が3%から差し引かれるのか、差し引かれた結果の3%を保証するのかが、あいまいに見えます。
また、元本の積立金の一部が保険金として差し引かれ、積立の対象外となってしまうようです。さらに、それら費用がWEB上で明記されていません。
コスト概要まとめ
わかりやすくするために試算した結果をグラフにまとめます。元本3万円/月で利回り3%の運用を例えば15年間複利運用すると税引後20.37%のトータル利回りで元本5,400,000円に対し、6,500,208円の総額となるのですが、外貨建保険の有利な条件下の見積でも払込、払戻時点での手数料分が積み重なり17.36%(約3%の損)の利回りで6,337,707円、外貨建保険の最悪な条件下での見積では6.3%(約14%の損)の利回りで5,769,030円となります。特に最悪の条件では、外貨定期預金を下回る運用成績になってしまい、保険にする意味が果たしてあるのか?ということになってしまいます。
外貨建保険の問題点
上述のように、外貨建保険は構造的に問題をはらんでいます。以下の記事(DIAMOND Onlineより引用)が、外貨建て保険の問題点を的確にあぶりだしていてわかりやすかったです。
記事のエッセンスともいえる最後の文章を以下に引用させて頂きます。
さて、セールス担当者のトークの手口をご覧になって、どう思われるか。読者は、これらの全てをにっこりと笑いながらその場で跳ね返す自信を持てるだろうか。
外貨建て保険のような、本来顧客のためにならない商品のセールストークには、幾つか特徴がある。
(1) 顧客の不安との関連づけ
(2) 錯覚の最大限の利用(外貨は利回りが高いという錯覚、時間分散が有効という錯覚など)
(3) ごく一部のメリットの強調(「保険料控除」など)
(4) 耳ざわりのいい言葉の印象付け(「分散投資」など)
(5) 複数の要素の組み合わせ(死亡保障と分散投資など)
(6) 売り手側のメリット(分厚い手数料!)を話題にしない外貨建て保険を売る、銀行員や、街の保険ショップの担当者、保険会社の手先となるファイナンシャルプランナーなどは、利害が絡まなければ、上記の諸々の仕掛けが分かり、個人の意見としては、外貨建て保険など決して他人には勧めない人たちなのだろう。
しかし、「銀行のため」だと思ったり、「営業ノルマ」があったり、「生活やビジネスのため」といった理由があると、ある者は顧客の利益に対して鈍くなることで自我を守り、ある者は組織に対する忠誠心で個人的な良心を覆い隠し、金融庁が求める「フィデューシャリー・デューティー」の精神からどんどん遠ざかって、「手数料稼ぎロボット」としての能力を磨いていくのだろう。
外貨建保険と同等のリスクでより望ましい選択肢は?
上述のような外貨建保険の問題点はあるものの、それと同レベルのあまり高くないリスクを取った上で、そこそこの利回りが期待できる資産運用をしたいというニーズは世の中にそれなりにあると思います。その場合、どのような選択肢が考えられるか、試しに考えてみました。
米国株式市場に上場している債券ETFを自動積立購入するのが良い
外貨建保険の、保険会社内部での資産運用は、対象の外貨の国債や債券による運用ではなかろうか…と推測しています。(これは自分自身の推測であり、間違っているかもしれません。もしその場合は情報ご提供頂けますと非常にありがたいです。)
確かに、外貨建の外国国債や社債には外貨上の利回りが2%以上あるものも多くあり、この利回りは魅力的です。
そうであるなら、シンプルに、様々な債券に分散投資できるETFを積立購入するという選択肢のほうが、保険会社内部での運用手数料が無い分、良い結果を得られます。自身がETFを購入するという形になるので、売却タイミングも自由ですし、保険のように満期前の解約でほぼ確実に元本割れするということもありません。(ETF自身の値動きによって元本割れというリスクはもちろんありますが…)
住信SBI証券、住信SBI銀行、NISA制度のコンボで、為替手数料の極小化、ETFの売買手数料の無料化、月々の自動積立が可能になるのでは?
上述したETFへの投資ですが、具体的にどのようにすべきかを考えてみました。
以下のサービス、制度を使うことで、もっとも効率的な、外国債券への分散積立投資が自動的に実行できます。
円→US$への為替取引
住信SBI銀行の外貨積立預金機能を使うことで、1ドル当たり2銭という最安手数料でのドル転が可能となります。しかも、この機能は、毎日買付や毎週買付や毎月買付等のドルコスト平均法を初期設定だけしておけば自動でずっと継続してくれるという優れものです。
他社のサービスでは手数料が明示されていなかったり、手数料が高額だったりするものが多く、今のところ住信SBI銀行の外貨積立預金機能を上回るものは無いといっても過言ではないでしょう。
US$で債券ETFを自動積立
住信SBI証券のETF自動積立機能を用いることで、手動で注文を入れずとも、投信自動積立のように債券ETFを自動的に積立ていくことが可能です。こちらも米国株式市場に上場しているETFを対象とした自動積立機能は、住信SBI証券しか提供しておらず、大きな強みと言えるでしょう。ただし、問題としては、積立の場合でもETFの購入手数料が発生してしまうということがあるのですが、以下に記載するようにNISA口座での買い付けとすることで、無料にできます。
NISA口座あるいはジュニアNISA口座でのETF自動積立にすることでETF買付手数料は無料にできる
ETFの買付では、通常1回あたり最低5~20ドル前後の手数料が発生します。積立のように少額ずつ購入していく場合には、手数料は大きく利益を損なってしまいます。しかし、住信SBI証券では、NISA口座(ジュニアNISA口座、積立NISA口座含む)では、ETF買付手数料が無料といなっており、ETF自動積立機能を用いても、ETF買付手数量は無料となるようです。つまり、ノーロードの投信と同じ感覚で、信託報酬が圧倒的に低いETFを自動買付できるという、投信のお手軽さとETFの低コストという「両者の良いとこどり」ができるわけです。
具体的な銘柄は?
BND単体かBNDXを組み合わせるかの2択がオススメです。BNDならばアメリカの債券市場に広く分散投資された内容ですし、BNDXならアメリカ以外の全世界の債券市場に広く分散投資された内容となっています。
どちらのETFの信託報酬も最安レベルですし、値動きは株式等に比べてかなりマイルドですし、2~4%前後のUS$ベースの利回りが配当という形で定期的にしっかりあるので、株式ほどのリスクは取れないけど、そこそこのリスクをい取って資産運用したいというニーズにはかなりマッチするのではないか…と思います。
債券ETFを用いた資産形成方法を紹介したものの、若者ならばリスクを取って株式への投資がオススメ
それなりにマイルドな資産運用という前提で、上述したような債券ETFを用いた投資の方法を考えてみましたが、若者ならば、リスクを取って、株式への投資を行うのがオススメです。長期投資ならば、株式投資と債券投資のリスクはほとんど同じであるにも関わらず、リターンは株式のほうが圧倒的に高くなることが歴史的に示されているからです。
とはいえ、個別銘柄への投資は難易度が高いため、ETFや投資信託を用いたドルコスト平均法的な手法がオススメです。積立NISAならば、楽天米国株式インデックスファンドや楽天全世界株式インデックスファンド等、NISAやジュニアNISAならば、それら投資信託以外にも、VTI、VYM、VOO、VIG等が鉄板でしょうか。
とはいえ、これらに債券ETFを加えることでリターンと値動きのマイルドさを両立させるという考え方もあると思います。自身で色々考えながら、より手数料の少ない、良い資産形成を進めていけると良いですね。
こんな記事も書いています。
BNDとBNDXの2つのETFをご紹介しましたが、全世界の債券市場に1本で分散投資できるETFの新設をバンガードが検討しているようです。より良い便利なコストの低い商品の選択肢が増えるのは嬉しいですね。