以前から気になっていた本だったのですが、どちらかと言うと不動産投資向けの本だという思い込みがあり、これまで手にとる機会がありませんでした。しかし、とあるタイミングで、手に取ってみた結果、○○投資といったジャンルに関係なく、金融リテラシーを高めたり、より良い人生を送るために、誰もが人生の早いタイミングに読んでおくべき良著であると感じたので、印象に残ったフレーズや所感をまとめてみようと思います。
目次
印象に残ったフレーズと所感
お金のために働くか、お金を働かせるか
中流以下の人間はお金のために働く
金持ちは自分のためにお金を働かせる
実際に言葉にしてみると、残酷なフレーズだと感じます。しかし、投資を実際にやっている方から見ると、非常に納得感のある言葉だと思うのですがいかがでしょうか。
本の中では、自分のためにお金を働かせるのに重要な心構えとして、恐怖と欲望が人生に与える悪影響を知り、それに対して感情に支配されず、頭でものを考えることで立ち向かう姿勢、頭を使ってお金を生み出すことの重要性が語られていました。
これらは投資の世界でも非常に重要なことだと思います。クソダサい投資の誘惑は、恐怖と欲望につきまとってくるでしょう。それらをはねつけ、賢明な投資を続けるために、非常に重要なマインドセットだと思いました。
資産と負債
金持ちは資産を手に入れる。
中流以下の人たちは負債を手に入れ、資産だと思いこむ。
言葉は厳しいですが、確かにその通りだと感じさせられる力のあるフレーズでした。わかりやすい例だと、金持ちの不動産投資と中流以下の人たちの(住宅ローンを組んでの)マイホーム購入といった実例が挙げられるでしょうか。
資産は私のポケットにお金を入れてくれる
負債は私のポケットからお金をとっていく
資産と負債についてのこの説明は、これまで聞いたどんな説明よりも単純明快でわかりやすかったです。このような切り口で見ることで、これまでの人生で資産だと思っていたものが、資産ではなく、実は負債であることに気づくということも多いかもしれません。
日本人のこれまでの資産形成としては、銀行預金がメインでした。かつては、年率数%の利息がつき、何もせずとも「私のポケットにお金を入れてくれる」という状況で、確かに資産と呼べるものでした。しかし、現在は、空前の低金利の時代であり、もっとも良い条件でも年率0.1%程度しか利息はつきません。さらに、最近は、銀行口座の維持に手数料が課せられるかもしれないという話が出てきています。銀行預金はもはや「私のポケットにお金を入れてくれる」存在ではなくなり、それどころか、「私のポケットからお金をとっていく」存在に変貌を遂げてしまうのかもしれませんね…。
自分のビジネスを持つことの重要性
この本では、真に価値がある資産を持つことと増やすことの重要性が全編を通して語られています。資産の例として、以下のようなものが挙げられていましたので引用させて頂きます。おそらく、著者のロバートキヨサキさんは、この中の1番の「自分がその場にいなくても収入を生み出すビジネス」の重要性を非常に大きく見ていると思います。
- 自分がその場にいなくても収入を生み出すビジネス。
- 私は会社を所有しているが、実際の運営は他人がやっている。もし、自分がその場にいて働かなければいけないのならば、それはビジネスとは言えない。自分の「仕事」だ。
- 株
- 債券
- 収入を生む不動産
- 手形、借用証書
- 音楽、書籍などの著作権、特許権
- その他、価値のあるもの、収入を生み出すもの、市場価値のある物品など
この中で、自分は2番の株式に注目して、資産形成を進めています。3番と5番の中間に位置するイメージのソーシャルレンディングにも投資しています。最後に、仮想通貨への投資は7番のその他に相当すると思いたいところですが、どうでしょうか。
ブログは6番と7番の中間的な内容と言えるでしょうか。しっかりマネタイズできているという次元にはまだまだ遠いですが、頑張っていきたいと思います。
そして、自分には1番の「ビジネス」、4番の「収入を生む不動産」はまだありません。それらの重要性は理解できるのですが、それらに対する自分自身の恐怖を克服できるための知恵は、これら領域についてはまだ不足している…というのが正直な気持ちです。
節税について
会社を作って節税する考え方、大まかな方法論が説明されていました。日本もアメリカ同様、累進課税です。自分自身は、累進課税の恐ろしさを味わうレベルの収入額は未だ得られていませんが、投資で発生した利益に対する税率と勤労収入に対する税率のギャップ等、税金について学ぶと見えてくる世界が変わってくることは確かです。アメリカと日本の税制には違いがあり、必ずしも本書で書かれていることが細部まで日本で当てはまるかはあまり自信がありません。しかし、しっかり学んで税金に対して適切な対応を取ることが大切なのは、万国、いつの時代にも、非常に重要でしょう。この本ではそういったマインドセットを学べることが非常に良いと思いました。
度胸が大切
成功するために真に重要なことは何かという問いかけに対する答えとして納得感があるものでした。以下に本の中から引用させて頂きます。
学校教育を終えるとたいていの人は、大切なのは大学の卒業証書や成績ではないことに気がつく。学校の外の実社会では、いい成績以外の何かが必要だ。それを「ガッツ」と呼ぶ人もいれば、「ずぶとさ」「やる気」「大胆さ」「はったり」「ずるがしこさ」「世渡りの技術」「ねばり強さ」「頭の切れ」などと呼ぶ人もいる。呼び名はなんであれ、この「何か」が、最終的には学校の成績などよりもその人の将来に決定的な影響を与える。
実社会で働きはじめて感じたのは、まさに上記のようなことなのです。さらに次のような記述もありました。
個人の才能の開花を邪魔する最大の要因が、過度の「恐怖心」と「自信のなさ」にあるということだ。答えはわかっているのに行動する勇気がない生徒をみると、私は悲しくなる。現実にはほとんどの場合、頭がいい人よりも「度胸のある」人のほうが成功への道を先へ進んでいく。
こちらも心にぐっとくるフレーズです。
この本に感じた課題
根底の主張は極めて好感を持てるものでしたが、実践手法や、マインドセットの徹底さという点において、私個人が異論を感じた部分もありました。ただし、これは、好みの問題という印象です。
実践的手法については記述が少ない
これは、本の目的自体が、副題に書かれている通り、「お金の哲学」を伝えることだからであることは理解しています。しかし、実践的手法に関する記述は、著者の実例がさらりと紹介されているに留まります。おそらくここの部分だけを近視眼的に真似ても資産形成に成功することは難しいでしょう。自分自身で学び、考え、トライ&エラーするプロセスを果敢に繰り返せることができる人のみが、成功への道を歩んでいけるのではないか…と思います。
実例にはアメリカの制度の影響があり、日本での再現性はどうなのだろう…
日本で同様のことを実現できるのか?ということについては、私自信は知識不足でなんとも判断ができません。(もし、詳しい方いらっしゃいましたら、ご教授頂けますと幸いです。)しかし、表面的な手法のみを鵜呑みにして、とりあえずやってみるというのは、最悪の結果をもたらすと思います。この本の価値は、マインドセットの提供です。実践手法は、適切な知識を身につけてから慎重にトライすべきだと思いました。
株式投資の手法に関しては異論あり…
おそらく、著者のロバートキヨサキさんは、不動産投資によってかなりの資産形成を成した後に、株式投資への投資を行ったのではないでしょうか。本の中で紹介されている手法は、信頼できるパートナー(未公開株式を扱えるほどの株式ブローカー)と、まとまった手元資金が無いと成功するのは極めて難しいと個人的には感じました。ここは好みによる部分も大きいので、読者の皆様の所感も伺ってみたいですね…。私は、「初心者向けの手法ではなく、容易にオススメできないな手法だな…」と思いました。
人々皆が「完全に」そうならずとも良いのではないか…
ラットレースだけに囚われた人々が多いのは、喜ぶべき状況ではないと思います。しかし、この本に書かれた手法を、誰もが徹底的に実現しようとする社会が良いか?と言われると、本当にそうだろうか?と思ってしまうのが正直な自分の気持ちです。
「ラットレースから外に踏み出すささやかなほんの一歩の価値についてももう少し肯定的に捉えて人生を歩んでいきたいな…」というのが自分の意見です。例えば「積立NISAをはじめてみる」、「確定拠出年金をはじめてみる」、「ブログを書き始めてみる」といった類の、低リスクだけど一歩踏み出した取り組みですね。そういった取り組みを大多数の国民が実践するようになり、「国民全体が無理の無い範囲で少しずつ豊かになっていける」 or 「現在の豊かさを将来に残せる」そんな未来になってくれると良いな…と思いました。
こんな記事も書いています。
人生とお金に対する、哲学的な指南書としては、バビロンの大富豪という本もあります。これらの本の根底に通ずるものは、時を経ても変わることは無い、非常に価値ある主張を含んでいると思います。
金持ち父さん貧乏父さんからは、両極端な意見それぞれにしっかり耳を傾け、自身でしっかりと考えた上で、人生を歩んできた著者のロバートキヨサキさんの芯の強さが感じられます。一見、耳に痛い、厳しい意見でも注意深く聞き、自身でしっかり考えることで見えてくる景色があると思います。最近だと、バフェット太郎さんの本がまさにそれでした。
ロバートキヨサキさんの意見としては、本の中からは、投資信託でのお手軽な投資には、諸手を挙げての賛成ではない雰囲気を少し感じました。しかし、リスクを取る世界への第一歩としては、非常に価値があると自分は思っています。読者の皆様はいかがお考えですか?インデックス投資の入門書とともに考えてみてはいかがでしょう。