顧客にとって真に有用な資産形成サービスを利用するには、実店舗を持っている対面型の証券会社を利用するのではなく、ネット証券会社を利用したほうが良い場合が多いでしょう。(抜きん出ているのは、住信SBI証券、楽天証券、マネックス証券等だと私は思います。これら会社の口座開設は、ネットから簡単にできます。)
しかし、対面型の証券会社を利用せざるを得ない場合もあるかもしれません。一昨日の記事ではコスト面から、昨日の記事では、金融商品の種類と傾向の観点から、どのような意識で対面型証券会社とお付き合いすべきかを書いてみました。
今日は、第三弾として、資産運用を考えるに当たって基礎となるアセットアロケーションについてまとめてみようと思います。
目次
アセットアロケーションとは何か?
昨日の記事では、金融商品の資産区分をいくつか説明しました。(株式、債券、不動産、…)
アセットアロケーションとは、ざっくりいうと、上記資産区分の内、何にどれだけの割合をさくかという方針のことです。
例えば、株式60%、債券30%、不動産8%、金2%等といった具合ですね。
さらに細かく地域毎に分けて考え、先進国株式48.6%、新興国株式6.6%、国内株式5.6%、国内債券18%、先進国債券9%、新興国債券3%、先進国REIT4%、新興国REIT4%、金2%等といった例もあります。
投資の成績は、大部分がアセットアロケーションによって決まる
アセットアロケーションがなぜ重要なのかというと、投資成績の大部分が、アセットアロケーションで決まるからです。
「良い銘柄を選んで、タイミング良く安値で買い、タイミング良く高値で売りぬく」
これがうまくできるかどうかが投資成績を左右すると思っている方が多いでしょう。しかし、それは幻想です。過去のデータが示す結果は、もっと冷徹で、定量的なものなのです。
アセットアロケーションの定め方
では、そのように重要なアセットアロケーションを定める際、我々はどのようにすべきでしょうか。
ネット上で使える便利なツールを活用しよう
myIndex
様々な資産クラスに、何%ずつ投資したら、期待リターンとリスクがどれくらいになるかを定量的に評価してくれるサイトです。投資対象として一般的な資産が一通り網羅されており、非常に参考になります。私もよく使用させて頂いています。
リターンから決めるのではなく、リスクから決めることが大切
前述のようなツールを用いて、投資方針を考えるときに、リスクを先に考えておくことが非常に大切です。リスクとは、ばらつきの標準偏差です。つまり、例えば、リスク15%なら±3σ=±45%以上の振れ幅になる確率は0.3%以下といった統計的な推測ができます。リーマンショックの際等には、-2σを上回る暴落もあったことから、リスクの数値 X 3倍の割合の資産価値下落はありうると想定しておくのが良いと思います。
そして、それだけの暴落時に、投資方針をそのまま継続できるか考えてみましょう。ここでは、「その状況で夜ぐっすり眠れるだろうか?」「暴落時には、生活防衛資金でどれだけの期間耐えられるだろうか?」といったことを、保守的に、安全方向から考えてみることをオススメします。
期待リターンから決めると、ついつい、高いリターンを求めて、より多くのリスクをとってしまいがちです。リターンからではなく、リスクから決めましょう。
最初に債券の割合を大まかに決めるのが良いと思う
債券は、国内債券は非常に防衛的な位置づけですし、先進国債券も為替リスクはありますが株式に比べれば防衛的な資産です。これらの割合を予めある程度定めておくことがオススメです。
一般的には、120 – 年齢 [%]や、100 – 年齢 [%]等といった目安を聞くことが多いですね。60歳なら50〜60%といったところでしょうか。
しかし、長寿命化が進んでおり、老後の長い人生に備える上でも、長期投資でより優位性の高い株式の比率をもう少し高めるという考え方もあると思います。
次に不動産、金、その他コモディティ等への投資割合を決めるのはどうか
不動産、金、その他コモディティ等への投資は好みが分かれると思います。ここの資産区分への投資は、私はゼロでも良いと思っています。多くても10%以下くらいでしょうか。(完全に私の好みです。)
不動産
不動産はそれなりに大きなリターンを安定して実現してきた歴史的経緯があります。しかし、人口が緩やかに減っていく国内不動産等の価値が今後どうなるかについては、人それぞれ様々な考え方があるのでは?と感じています。
先進国、新興国の不動産は伸びしろはあると思いますが、それなりにリスクが高い投資対象であることには注意が必要かな…と思います。
金
意外なことに、金の、過去20年の投資リターンは意外と大きかったようです。ただし、金はただそこにあるだけで、あまり何も生み出してくれないのではないか…と個人的には思っています。
その他コモディティ
原油、穀物等の、商品市場への投資ですね。こちらは、過去20年の投資リターンはマイナスとなっています。金融危機時に他資産と違う傾向に動いて、資産全体の値動きをマイルドにする効果もあまり感じられません。長期投資としては、あまりメリットはないのかな…というのが個人的な意見です。
残りを株式にしてはどうか
今のところ、債券50〜60%、不動産及びその他資産0〜10%と考えたので、株式は残りの30〜50%といったところでしょうか。
株式は長期的な期待リターンはもっとも高い資産なので、できるだけ株式に資産比率は寄せたい気持ちが出るのですが、ここはリスクとの相談になります。繰り返しますが、「先にリスクを決めること」が大切です。
まとめ
アセットアロケーションについて、「ギュッ」とまとめてみました。ここの考えは、本当に人それぞれなので、今回書いてみた例は、あくまでも一例と捉えて頂けますと幸いです。
大切なのは、「自分で考えること」「リターンから決めるのではなく、リスクから決めること」です。
こんな記事も書いています。
資産運用における資産の種類や、金融商品の種類について書いた昨日の記事です。これら基礎を知り、地雷商品の特徴を大まかに掴んでおくだけで、投資の失敗の大部分を避けることができるのではないでしょうか。
コストにこだわろうということを書いた一昨日の記事です。インデックス投信なら0.1~0.2%くらい、ETFなら0.04~0.1%くらいにこだわりたいですね。
資産運用の基礎としてインデックス投資やインデックスファンドについて知っておくことは非常に重要だと思います。体系的に短時間で学ぶには、書籍がオススメです。私のイチオシは、水瀬ケンイチさんの「お金は寝かせて増やしなさい」です。