顧客にとって真に有用な資産形成サービスを利用するには、実店舗を持っている対面型の証券会社を利用するのではなく、ネット証券会社を利用したほうが良い場合が多いでしょう。(抜きん出ているのは、住信SBI証券、楽天証券、マネックス証券等だと私は思います。これら会社の口座開設は、ネットから簡単にできます。)
しかし、資産がある一定以上の規模(数億クラス?)になると、IPOの取扱等においては、ネット証券を上回るメリットがある場合もあるかもしれません。
また、人間関係的にこれまでお付き合いしてきた担当の方とすっぱり縁を切りにくいという方もいらっしゃるかもしれません。(多くの場合、高い手数料を長年に渡って取られることになりやすいと思うので、もっとドライな判断が必要だと自分は思うのですが…)
そのような場合に、実店舗を持っている対面型証券会社とどのようにお付き合いすべきか。少し考えてみました。なお、私自身は、とてもそのようなステータスを持っていないので、妄想に類する考えであることは、ご承知おきください(笑)
コストと提供されるサービスについて
対面型証券会社でのコストはネット証券より高い
対面型証券会社での取引で発生するコストは、ネット証券よりも高いです。しかし、コストが高い分、より良い資産運用サービスを提供してもらえるかと言われると必ずしもそうでもありません。
対面での投資アドバイスの有用性は実質的には疑問がある
「対面での投資アドバイスが有用だから高コストの価値がある」という意見もあるかもしれませんが、どちらかというと、証券会社ががっぽり儲かる(=顧客が高い手数料を支払う必要がある)金融商品への誘導がメインという印象です。
顧客側で知識をつけてダメなものにはっきりと「NO!」を言おう
上記のような状況は悲しいですが、顧客の側がコストや資産運用に対する知識や意識を高めて、高額な手数料のものや、本質的に筋の悪い商品を提示された際に、はっきりと「NO!」の意思表示をすることが重要です。(究極的には、その証券会社を利用するか否かの選択も含めて!)
まずはコストから…コストを明確に把握して、低コストにこだわろう!
まずはコストにどのような種類があるか以下に説明してみようと思います。これらコストは通常の商品説明資料の中では、比較的巧妙に隠されています。あらゆる取引の際には、「今回の取引で手数料は何円かかるのか?何%かかるのか?」ということを明確に確認するようにしましょう。相手が、何%、何円という数字をはっきり答えられない場合は、決してその商品を購入してはいけません。そして手数料の金額や割合を聞くと、その高額さに驚かれる場合が多いのではないでしょうか。
コストにはどのようなものがあるか
購入時に発生するコスト
購入手数料…手数料の相場
名前の通り、投資信託等の商品を購入する際に発生する手数料です。近年では、購入手数料が無料の投資信託がほとんどです。まず、ここが無料で無い時点で、最大限の警戒をしましょう。
購入手数料の相場は、インデックスファンド、アクティブファンドともに0%(=購入手数料無し=ノーロードと呼ばれます。)が目安です。
その商品を保有している間、継続的に発生するコスト
信託報酬…信託報酬の相場
投資信託等の金融商品は、購入後、保有しているだけでも、手数料が発生します。この手数料は、保有している期間中、毎日発生します。このコストを信託報酬と呼びます。信託報酬は年率0.2%等と示されます。このコストは、最重要と言っても過言ではありませんので、明確に確認しておきましょう。
信託報酬の相場は、インデックスファンドは0.1〜0.2%/年以下、高くても0.5%/年以下といったところでしょうか。アクティブファンドの場合は、1%/年以下というのが現実的でしょうか。
もし、この手数料が高い商品を保有している場合は、基本的には一刻も早く該当商品を手放したほうが良いでしょう。
もちろん、高コストを補ってあまりある、高パフォーマンスを出してくれる可能性はゼロではないかもしれません。しかし、その可能性は不確定です。それに対し、コストは確実にパフォーマンスを悪化させます。株式への投資で期待される安定的リターンが5%前後であることを思うと、1%以上のリターン悪化を無条件に受け入れることは、かなり厳しいのではないでしょうか。
解約手数料、信託財産留保額
投資信託を売却する際に必要な手数料です。こちらもゼロでは無い場合は警戒が必要です。
解約手数料、信託財産留保額の相場は、インデックスファンド、アクティブファンドともに0%(=解約手数料、信託財産留保額無し=ノーロードと呼ばれます。)が目安です。
コストを考慮すると対面型証券会社の選択肢は相当限られる…
実際に対面型証券会社の商品ラインナップを見ると、上記条件にあてはまる投資信託のラインナップがほとんど無い&営業的にかなり隠されているという印象を受けます。残念ながら、それが現実です…。
対面型証券会社に期待すべきサービス
投資信託では、買うべきものはほとんど無いという結果になってしまいかねない状況です…。このような状況で、「賢明なる個人投資家」たる顧客は、対面型証券会社にどのようなサービスを期待すべきでしょうか。(保有資産が少ない人は、近寄る意義が正直無いと思います。もし、数億クラスの資産を持っていたら…という前提で考えてみます。)
顧客の状況に合わせた投資方針策定やアセットアロケーション設定での助言を行う
本来、こういった部分が、対面型証券会社の強みたるべきだと思います。
- 顧客の状況やニーズに合わせた、持続可能で安定的な投資方針を定める。
- アセットアロケーション(何の資産にどれくらいの割合で資産を振り分けるか)をともに考える。
こういったアドバイスが受けられるなら、そのアドバイスサービスだけで、そこそこのお金を取れるのではないでしょうか。それらアドバイスへの報酬としての報酬体系を明確化し、投資信託等の販売手数料コストと明確に分ける。そのような運用が本来あるべき姿なのでは?と思います。
「金融商品販売のプロではなく、資産運用アドバイスのプロを目指してほしい。」販売行為自体に高い付加価値がある時代は既に終焉を迎えつつあると、私は思います。(とはいえ、誰でも、少し学べば、自分自身で投資方針やアセットアロケーションを考えられるとは思いますが…)
資産残高と投資知識の上級者に対してはIPO(新規公開株)サービスに特化してはどうか
対面型証券会社は、IPOでは、現在も確かな強みを持っていると思います。資産残高が少ないネット口座のユーザーには、特にメリットはありませんが、保有資産の多い対面型の取引をしているユーザーには、優先的にIPOが割り当てられるという話も耳にします。
IPOは、筋が悪くない銘柄なら、当たれば大きいと思うので、積極的に活用できるとよいですね。ただし、ダメな銘柄もあるので、きちんと情報収集できて、ダメな銘柄のIPOをきちんと断れるユーザー側の知識と経験が問われると思います。
今日は、コストと対面型証券会社に期待するサービスについて書いてみました。明日は、証券会社で販売されている金融商品のタイプについて整理してみようと思います。
こんな記事も書いています。
自身の現状からは想像が難しいですが、「老後に資産形成成功できていたらどうするか?」ということを妄想して書いてみた記事の第一弾です。「老後の投資方針をどのように定めるか?」という問いへの自分なりの答えですが、どうでしょうか。
妄想編第二弾です。具体的な手順をかなり書いてみました。見返してみると結構細かい手順となっており、投資信託等でもう少し簡易的に実行するやり方のほうがよいかもしれないな…とも思います。
資産運用の基礎としてインデックス投資やインデックスファンドについて知っておくことは非常に重要だと思います。体系的に短時間で学ぶには、書籍がオススメです。私のイチオシは、水瀬ケンイチさんの「お金は寝かせて増やしなさい」です。